合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない
 悠磨はきっかけを作っただけ。藤田の真っ直ぐな性格が、孫を心配するあまりに頑固になっていた菊枝を安心させたのだろう。

 しかし、藤田は悠磨に感謝しきりで、友人兼恩人として結婚式に招待させてほしいと言ってきた。それが今の電話だ。普段なら腰が重いところだが藤田の熱意に押され了承した。鈴菜がプランナーとしてサポートする姿を見てみたいという気持ちもあった。

 その鈴菜はまだ仕事中で、悠磨はマンションにひとりだ。リビングのソファーに腰かけながら悠磨は妻に思いを馳せた。

(ここ最近、鈴菜の様子がおかしい気がする)

 勤め先の病院で顔を合わせた日辺りからだろうか。悠磨は鈴菜の言動に少しずつ違和感を覚え始めていた。

 今までと変わらず生活しているし会話も交わす。

 しかし、なにか言いたげにしてやめることが増えたし、無理をして明るく振舞っている気がする。

 体調でも悪いのか思って聞いてみたが『元気そのものです』と笑っただけだった。

(仕事で悩みでも抱えているのだろうか)

 リビングの窓から見える勤め先の白い建物は、傾きかけた日差しを受けて影を濃くしている。
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