合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない
『お義父さんをムーリット・アリーに連れていっちゃいました』
翌日、鈴菜にさらりと報告されて悠磨は驚いた。
『実は結婚式のときから、マスターとお義父さんがぎくしゃくしているような気がしてて。でもお義父さん、本当はマスターと話がしたそうだったので誘ってみたんです』
鈴菜は食事しながら父の本心を探り、ふたりが話す機会をつくるためにバーに誘ったようだ。おそらく最初からそのつもりで、父と夕食に行くと言ったのだろう。
「鈴菜ちゃん一杯だけ飲んで『あ、私明日の朝早いの忘れてました! せっかくですからお義父さんはごゆっくり』って下手な芝居してさっさと帰っていったよ。親父もポカンとしてた」
純也は思い出したように笑っている。
「目に浮かぶな。その後親父は?」
「ひとりで黙って二杯飲んで、『いい店だな、また来る』って言って帰ったよ」
「へぇ」
父がそんなことを言うなんて意外だった。
医者の道には進まず、大学卒業後は海外で働いていた兄。五年前に日本に帰ってきてバーテンダーになると言ったら『医者の息子が夜の商売なんて許さない』と激怒し、それがきっかけで親子の仲は完全に断絶していたから。
翌日、鈴菜にさらりと報告されて悠磨は驚いた。
『実は結婚式のときから、マスターとお義父さんがぎくしゃくしているような気がしてて。でもお義父さん、本当はマスターと話がしたそうだったので誘ってみたんです』
鈴菜は食事しながら父の本心を探り、ふたりが話す機会をつくるためにバーに誘ったようだ。おそらく最初からそのつもりで、父と夕食に行くと言ったのだろう。
「鈴菜ちゃん一杯だけ飲んで『あ、私明日の朝早いの忘れてました! せっかくですからお義父さんはごゆっくり』って下手な芝居してさっさと帰っていったよ。親父もポカンとしてた」
純也は思い出したように笑っている。
「目に浮かぶな。その後親父は?」
「ひとりで黙って二杯飲んで、『いい店だな、また来る』って言って帰ったよ」
「へぇ」
父がそんなことを言うなんて意外だった。
医者の道には進まず、大学卒業後は海外で働いていた兄。五年前に日本に帰ってきてバーテンダーになると言ったら『医者の息子が夜の商売なんて許さない』と激怒し、それがきっかけで親子の仲は完全に断絶していたから。