神様はもういない
私、どうしちゃったんだろう……!
相手は元婚約者とはいえ、幽霊だよ。それに私にはいま、雅也という大事な恋人がいる。それなのに、元彼に会えて嬉しくてときめいているなんて、そんなこと……。
あっていいはずがない。
彼はもう死んだのだ。
半年前に涙のお別れをして、ようやく前に進み始めたところだった。
羽島湊は過去のひと。これ以上、関わっちゃいけない。
必死にそう自分に言い聞かせて、「ごめん、今日はもう寝るね」と椅子から立ち上がった。
なんだか本当に、今日は疲れが溜まっているみたい。
きっと明日の朝目が覚めたら、湊はいなくなっているだろう。だから、今日ベッドに入ったらまた湊とお別れすることになる。ふともう一度彼に触れたいという衝動に駆られている自分がいて、唇を噛んだ。
……だめだよ、自分から触れたりなんかしたら。
雅也という恋人がありながら、幽霊とはいえ元彼に触れたいなんて思う自分が恨めしくて、同時に胸が軋んだ。
「あゆり、おやすみ。ゆっくり休んでね」
私の心中なんてこれっぽちも知らない湊が、一緒に暮らしていたころと変わらない挨拶をしてくれる。
「……うん、おやすみ」
きっとこれがもう、本当のお別れだ。
今のこの時間は、ボーナスタイムのようなものだ。
神様は気まぐれだ。
私から突然大事なものを奪っておいて、こうしてまた大事なひとを連れてきたくれたんだから。仕事で疲れている私が見る、都合のよい幻想。ゆっくり休んで明日の朝目が覚めたら、彼はもうここにはいない。
その事実に打ちのめされながら、彼に背を向けて自室へと入っていった。
相手は元婚約者とはいえ、幽霊だよ。それに私にはいま、雅也という大事な恋人がいる。それなのに、元彼に会えて嬉しくてときめいているなんて、そんなこと……。
あっていいはずがない。
彼はもう死んだのだ。
半年前に涙のお別れをして、ようやく前に進み始めたところだった。
羽島湊は過去のひと。これ以上、関わっちゃいけない。
必死にそう自分に言い聞かせて、「ごめん、今日はもう寝るね」と椅子から立ち上がった。
なんだか本当に、今日は疲れが溜まっているみたい。
きっと明日の朝目が覚めたら、湊はいなくなっているだろう。だから、今日ベッドに入ったらまた湊とお別れすることになる。ふともう一度彼に触れたいという衝動に駆られている自分がいて、唇を噛んだ。
……だめだよ、自分から触れたりなんかしたら。
雅也という恋人がありながら、幽霊とはいえ元彼に触れたいなんて思う自分が恨めしくて、同時に胸が軋んだ。
「あゆり、おやすみ。ゆっくり休んでね」
私の心中なんてこれっぽちも知らない湊が、一緒に暮らしていたころと変わらない挨拶をしてくれる。
「……うん、おやすみ」
きっとこれがもう、本当のお別れだ。
今のこの時間は、ボーナスタイムのようなものだ。
神様は気まぐれだ。
私から突然大事なものを奪っておいて、こうしてまた大事なひとを連れてきたくれたんだから。仕事で疲れている私が見る、都合のよい幻想。ゆっくり休んで明日の朝目が覚めたら、彼はもうここにはいない。
その事実に打ちのめされながら、彼に背を向けて自室へと入っていった。