神様はもういない
「最近デートも行けてないしね……。今週発表が終わったら行こうよ。お疲れ様デート」
 雅也の表情が柔らかく緩んで、目元が細められる。
「お疲れ様デート……」
 デート、という響きからつい、湊の顔を思い浮かべてしまう。
 湊ともう一度デートしたいな、なんて。最低なことを思ってしまう。
 そんな私の心中などつゆも知らないであろう雅也が、「どう?」と純粋な瞳で問いかけてくる。
「……うん。いいね、デート。私もしたいな」
「おお、そうこなくっちゃ。どんなことしたいとかある?」
「ちょっと、咄嗟には出てこないかな。雅也が考えてよ」
「おっけー。じゃあ、考えておくよ。日程は次の日曜日でいい?」
「うん、大丈夫」
 私が思考停止して「考えて」と投げても、雅也は嫌な顔ひとつせずに引き受けてくれる。しかも、全然嫌味なく。むしろ「任せて」と言わんばかりの勢いにただただ脱帽するばかりだ。それが彼の優しさなのだ。雅也は、年下だけどしっかり者でとても優しい。実は女の子と交際するのは私で二人目だそうで、しかも年上と付き合うのは初めてとのこと。だから不慣れなところが多くてごめん、と謝られるけど、私としてはまったく不慣れなようには見えない。
 私と雅也はちょっとだけ似た者同士かもしれない。
 お互い真面目で、色々と考えすぎてしまうところがある。
 私と湊は正反対の性格をしていたから、雅也との交際は、私にとっては新しいことの連続になりそうだ。
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