神様はもういない
「あのね」
アルコールが全身に回って、ちょっと気持ち悪い。頭にどんどん血が昇っていく。気を抜いたらふらふらと倒れ込んでしまいそうになる。私は、なんとか椅子から立ち上がり、湊と向き合った。
「湊は半年前に、死んでるんだよ」
死という言葉を口にするとき、いくばくか胸が痛んだ。
だって、私が一番受け入れられてないのだ。湊が死んだこと。湊がもう、生身の人間として生きることがないこと。私の隣にいられないこと。未来に彼がいないこと。
冷静に考えたら心がどうにかなりそうだから、考えないようにしていた。これ以上、痛みで胸が抉られないように。心が壊れてしまわないように。自分を守るために、湊がいなくなってしまった現実に、蓋をして見えないようにしていた。
でもだめだ。
だって幽霊になった彼を前にすると、こんなにも正気でいられなくなるもの。
触れられたら嬉しくて、胸がときめいて、たまらなくなる。恋焦がれてこの身が焼けていく。考えないようにしたって、どこにいたって、私の気持ちは湊に一直線に向かってしまうんだ。
「死……? はは、なに言って」
まさか、と最初は私がドッキリで嘘をついていることを疑わないまなざしで、へへと笑っていた湊。でも、私が湊を真剣に見つめて目を逸らさないから、いよいよ本当だと悟ったらしい。額に汗が滲んでいくのが見えた。幽霊でも汗が流れるのか——なんてぼんやりと考えて、後からくる衝撃から思考を逸らそうとした。
「本当に……?」
湊の瞳がふるりと揺れる。私は彼の目から一瞬でも視線を離さないまま、ゆっくりと頷く。
アルコールが全身に回って、ちょっと気持ち悪い。頭にどんどん血が昇っていく。気を抜いたらふらふらと倒れ込んでしまいそうになる。私は、なんとか椅子から立ち上がり、湊と向き合った。
「湊は半年前に、死んでるんだよ」
死という言葉を口にするとき、いくばくか胸が痛んだ。
だって、私が一番受け入れられてないのだ。湊が死んだこと。湊がもう、生身の人間として生きることがないこと。私の隣にいられないこと。未来に彼がいないこと。
冷静に考えたら心がどうにかなりそうだから、考えないようにしていた。これ以上、痛みで胸が抉られないように。心が壊れてしまわないように。自分を守るために、湊がいなくなってしまった現実に、蓋をして見えないようにしていた。
でもだめだ。
だって幽霊になった彼を前にすると、こんなにも正気でいられなくなるもの。
触れられたら嬉しくて、胸がときめいて、たまらなくなる。恋焦がれてこの身が焼けていく。考えないようにしたって、どこにいたって、私の気持ちは湊に一直線に向かってしまうんだ。
「死……? はは、なに言って」
まさか、と最初は私がドッキリで嘘をついていることを疑わないまなざしで、へへと笑っていた湊。でも、私が湊を真剣に見つめて目を逸らさないから、いよいよ本当だと悟ったらしい。額に汗が滲んでいくのが見えた。幽霊でも汗が流れるのか——なんてぼんやりと考えて、後からくる衝撃から思考を逸らそうとした。
「本当に……?」
湊の瞳がふるりと揺れる。私は彼の目から一瞬でも視線を離さないまま、ゆっくりと頷く。