勘違いで惚れ薬を盛ってしまったら、塩対応の堅物騎士様が豹変しました!

15.もう一度

「聞きたいことはこれで全てか?」
「は、はい」

 つまりは全部わたしの勘違いだったわけだ。
 勘違いで、とんでもないことをしてしまった。

「それで、君のしたとんでもないこととは、一体何なのだろう」
「えっと、その、色々と、誤解がありまして」

「誤解? 何が誤解なんだ?」

 きちんと説明しなければならないと思うのに、目の前のアルフレッド様の青い瞳が悲し気な色を宿す。肩に乗せられた手の力が少しだけ、強くなる。

「では、君は俺に誤解や間違いで口付けをしたのか」
 その手が、微かに震えていることにわたしはやっと気が付いた。

 自分の本当の想いを伝えることは怖い。
 それはきっと、誰だって、アルフレッド様だって、同じだ。

「いいえ」
 だから、今度こそちゃんと、それに応えたいと思う。

「わたしは、誤解や間違いでキスしたりなんか、しません」

 勘違いは色々あったけど、わたしがアルフレッド様を好きなのは事実だ。

「では、俺と交際していただけるということで」
「はい」

 わたしが頷いたら、アルフレッド様がわざとらしく咳ばらいをした。
 青い瞳に、不思議な光が宿っている。何か企みを宿したようなそれは、いくらか窺うように揺れる。

 わたしが首を傾げれば、

「もう一度、構わないだろうか」

許しを乞うように、アルフレッド様は言った。

「本当は、こういうことは俺からしたかった」

 そこまで言われて、わたしはやっとそれがキスのことだと気が付いた。自分のしてしまったことが途端に現実として迫り来るようで、かっと頬が熱くなる。

 たまらず、わたしはアルフレッド様から目を背けた。

「いや、いいんだ。君が嫌なら、しない」

 これが存外にややこしい。別に嫌というわけではなくて。けれど強請れるようなものでもない。
 顔を上げれば、満月から少し欠けた月と目が合った。

 くいっとアルフレッド様の服の袖を引っ張る。

「いやではないです」

 これより先を望む言葉の語彙は、わたしの内にはない。だから後はただ、身を任せるように目を閉じる。

「クリスタ」

 火照った頬と同じぐらい熱い手が触れる。長身のアルフレッド様が屈む気配がして、額を吐息が掠める。

「愛している。俺と一緒にいてくれ」
 そしてもう一度、唇にやわらかさが触れた。

 わたしはそれを確かめるように、アルフレッド様の広い背に手を回した。
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