勘違いで惚れ薬を盛ってしまったら、塩対応の堅物騎士様が豹変しました!

17.真実の愛

「あんた、作った薬が違ってたのよ」
「ちが、う?」

 アルフレッド様にはあんなに効いたのに。何が間違っていたというのだろう。

 メリ姉は戸棚を開けると、ガラスの小瓶を二つ取り出して並べた。どちらの瓶にも白く小さな花が入っている。

「あんた、シレネの花とハナツメクサを間違えたの」
「へっ」

「こっちはシレネ。こっちがハナツメクサよ」

 確かにわたしが使ったのはハナツメクサだった。こうして見比べてもよく似ている。それに、あの時は自分のことで頭がいっぱいだったから。

「あと、あんた泣きながら薬作ったわね?」
 さすがは一級魔法使い。まるで見てきたかのように、メリ姉は言う。

「そうだけど……」
「だったらやっぱり、あんたが作ったのは惚れ薬じゃないわ。“真実の薬”よ」

 惚れ薬よりこっちの方が数段難しいんだからと、メリ姉は溜息を吐く。

「人の心っていうのはどこか取り繕ったり本音と建前があったりするものでしょう? けれどこの薬を飲んだ者はそれができなくなって、全部本音を話してしまうの」

「ってことは」
 わたしが作ったのは惚れ薬ではなくて、真実の薬だった。

 脳裏に、様々な光景が蘇る。

 わたしの手を取って跪いたアルフレッド様。
 花を髪に挿してくれたアルフレッド様。
 喫茶の向かいの席で、わたしをずっと見ていてくれたアルフレッド様。

 あれは全部、アルフレッド様の本音だったということ?

「で、でもちゃんと最後に解毒薬も飲ませたのに!」
 わたしがフラスコに残っていた丸い塊も飲ませたと言ったら、メリ姉はぱちぱちと瞬きをした。

「え、あんたまさか“真実の結晶”も飲ませたの?」
「う、うん」

 メリ姉は大袈裟に肩を竦めて両手を天井に向けた。「真実の薬に解毒薬はないの。その代わり、その効果を数段高めた真実の結晶が副産物としてできるの」

「奥手だと思ってたのに、意外とやるじゃない。そりゃあ、この急展開にも納得よ。私ちょっと、相手の騎士様に同情するわ」

 どうやらわたしの恋は最初から、叶っていたらしい。
 しかしながら、少々、かなり荒っぽい手法で。

「まあでもよかったじゃない。真実の愛を見つけた魔女さん」
 そう言って、メリ姉はわたしの額を小突く。そのまま得意げに片目をつぶってみせる。

「お姉様にだってこんなこと、できっこないわ」

 こうして、わたしは無事大人の魔女の仲間入りを果たしたのだった。 



 秘密の心に春の花 乙女の涙と星の夢 そして最後にひとつまみ
 飛び込む勇気があったなら 真実の愛は実るでしょう
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