ハイスペ御曹司で年下幼馴染の山田一郎が誘ってくる送迎を断ったら、とんでもない目に遭った件

しかたなく

「なあ茉莉、俺がお前を車で送ると、いったい何が大変だっていうんだよ? 満員電車に乗るより車の方が楽ちんだろ。なんでそんなに迷惑そうな顔するんだよ」


一郎はちょっとむくれてたけど、私はお坊ちゃん育ちの一郎に一般庶民の感覚を説明するのが面倒くさくて、聞き流すことにした。


「とにかく乗れよ」


一郎は周囲を素早く見回すと、(あご)をしゃくった。

いつもより早い朝の冷たい空気のせいか、見慣れたご近所風景はいっそう静かに感じる。
通りの奥に見える白い車のハザードランプだけが、淡々と点滅していた。

いくら幼馴染とはいえ、私たちは結婚適齢期の男女なんだし、朝っぱらから言い合って誰かに変な噂を立てられたら困るよね。

一郎も周囲を気にしてるし、私は今日のところはあきらめて、しかたなく車に乗ることにした。
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