契約外の初夜で、女嫌い弁護士は独占愛を解き放つ~ママになっても愛し尽くされています~
「私じゃまだまだ力不足だけど、やってみたい」
「そう言ってくれると思ってたわ。でも、本気でうちを継がせるなら、今まで以上に厳しくするよ。身内だからこそ、他のスタッフから不満が出ないように誰よりも努力してもらうし、スタッフのために嫌な役回りもしてもらうわよ?」


 私にできるだろうか……という不安はある。
 それなのに、揺らぐ気持ちはない。


「経営や営業についても学んでもらうし、スタッフの育成もしてもらうからね。全部にぶつかっていく覚悟はある?」
「はい。全力でやるから、挑戦させてください」
「じゃあ、これからもよろしく」


 差し出されたさっちゃんの手を握り、ギュッと握手を交わす。
 深雪は温かい眼差しで、「頑張って」と言ってくれた。


 花本パートナーサービスでは、昇進していくほど家政婦やシッターとして現場に出る機会がなくなっていく。
 さっちゃんの『現場を知らない人間に会社は動かせない』というポリシーがあるため、全員が現場経験者だけれど、今では内勤に徹している。
 あまりにも人手不足の場合には現場に行く機会もあるものの、稀なことだ。


 つまり、何年か先には基本的に家政婦として働くことはなくなる……ということ。
 内勤より現場が好きな私には、厳しい日々になるだろう。
 それでも、家政婦やベビーシッターを必要としている人たちのために、花本パートナーサービスのよさや技術を届けていきたい。
 その思いがあるからこそ、不安よりもワクワクする気持ちの方が大きかった——。

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