契約外の初夜で、女嫌い弁護士は独占愛を解き放つ~ママになっても愛し尽くされています~

◆Side Yuri

 早くも真夏日が続く、六月中旬。
 先月末に引っ越した俺は、慌ただしい日々を送っていた。


 再来月に出産予定日を控えている那湖は、すっかりつわりが落ち着き、仕事と家事を両立している。
 ただ、徐々に動きにくそうになってきたため、『まだ大丈夫』と言い張る彼女を説得し、来週から家政婦を依頼することにした。


 こうでもしなければ、きっと那湖は無理をしてしまう。
 これまでの苦い経験から、とにかく自分が思っているよりもさらに先回りをして物事を進めるようにしていた。


 それに、彼女は将来、花本パートナーサービスを継ぐかもしれない。
 この話を聞いた時は、正直すぐには賛成できなかった。


 職業柄、経営者のクライアントや知人は多いが、とにかく様々な問題が起こりうる。
 どんなに順調に経営しているように見えても、社内や顧客とのトラブル、SNSでの炎上など、その内容は多岐に渡り、収拾がつかなくなる事例も見てきた。
 だからこそ、那湖にはそういう苦労をしてほしくない気持ちがあったのだ。


 しかし、彼女は今の仕事が好きで、なによりも本人の意志が固い。
 その姿を目にすると、応援したいのも本心だった。
 今は『那湖がやりたいと思うことなら応援する』と伝えており、その言葉通り見守ろうと思っている。

< 173 / 187 >

この作品をシェア

pagetop