契約外の初夜で、女嫌い弁護士は独占愛を解き放つ~ママになっても愛し尽くされています~
「おお、櫻庭。やっと話せるな」


 黒髪を後ろに撫でつけた所長は、ダンディな雰囲気の男性だ。
 年齢は、五十代後半だと聞いている。
 細身のスーツを着こなす体躯はスタイルがよく、上品に見える。


 スッと伸ばされた背筋に、私も思わず気を引き締めるように姿勢を正した。
 所長が皺が刻まれた目尻を下げて、侑李さんの隣にいる私を見る。


「待ちくたびれたよ」
「申し訳ございません。婚約者の辻山那湖です」
「はじめまして、辻山と申します」
「椎名です。櫻庭がお世話になっています」
「いえ、そんな……」


 丁寧にお辞儀をした私に合わせるように腰を折られたことにも、優しくかけられた言葉にも、恐縮してしまう。


「櫻庭にこんなに可愛い人がいたなんて知らなかったので、話を聞いた時は驚きました。ふたりはいつから?」


 真っ直ぐな目で見つめられて、ドキッとする。
 別にたいした意図はないかもしれないのに、嘘をついている罪悪感や後ろめたさのせいか、つい深読みしてしまった。


 答えるのが遅れた私を庇うように、侑李さんが私の腰を優しく抱き寄せる。
 ウエストラインに置かれた手の感触に、今度は違う意味でドキッとした。

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