こちらヒロイン2人がラスボスの魔王と龍になります。

龍の死、眠る討つもの

 解放並びに占領とはこんなに淡々と進められていいものなのかとハイネは報告書を読みながら首を左右に傾げた。

「二頭の龍がいたから争いが起こり民心も分離したのですが、一頭になったら民心はこちらに集中しますよ」

 容態が回復しつつあるルーゲン師に疑問を尋ねこう返され釈然としなかったものの、こう着々と物事が順調に進んでいるとその言葉を信じざるを得なかった。

 まるで内乱などなかったように、偽龍などいなかったように、人々の生活は回復に向かいつつあった。

「敵側味方側問わず戦死者は共同埋葬させ家族への補償も隔たりなく行うこととする、随分と寛大というか無茶な方針を取るのですよね」

 戦勝報告後に送られて来た第一報は占領政策によるものであったが、筆頭がこれであった。共に乱の犠牲者とする、と。

 まず第一に戦乱があったということを無くす。

「これを見た時は驚きましたね。残存兵やらの叛乱とかどうなるかと思いましたが、まるでないのですよ。龍が薨去したと発表されるや全ての中央兵は降伏をし、それについて三将軍が各隊を吸収しそのまま原隊復帰を命じたと聞いたとき、私は頭がおかしくなったのかなと思いましたが、図ったかのようにピタリと戦いは終わりました。これまた戦闘など無かったかのように」

「龍への忠誠心で戦っていたのであるから、その龍がいなくなればこうなるとは分かっていた」

 バルツ将軍は事もなげにそう言っていたが、狐に抓まれたように何とも奇妙な戦いの結末。

「まぁそれもこれもあなた及び第二隊のおかげというのでしょうかね。ブリアンさんはその日の夕方に目覚めたと言いましたが聞いていました? 聞いていないのですよねきっと。だってこんなにも……眼を開かないのですから。まっ私の話しを聞かないのはいつものあなたですけど」

 ハイネはベットの上で横になり物言わぬものとなっているジーナに向かって言った。

「それであなたはいつ、目覚めますか?」

 戦争が終わったら死んでしまうとでも? そう思いながらハイネはジーナの頬をつねった。
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