こちらヒロイン2人がラスボスの魔王と龍になります。
つくりもの
赤に青に緑と色彩だけは豊かな花束を手に持ちジーナは龍の休憩所を目指した。
選び終わった際にキルシュが喜んでくれてホッとはしたが、何が目的なのか半分見失いそうになっているとジーナは感じた。
自分はいったいに何をしているのだろうかと。
「それは奉納物でしょうか」
いつの間にか隣にアルが並んで歩いていることに気付いた。今日はやたらと人が近づいてくる。そして何故か自分はそれに気づかない。
「おっおう、そういってもいいな。私には分からないがどうしても今日は花束が必要だとのことだ」
「まるで荒れ狂う川への供物のようですねそれ」
氾濫した川、と例えられジーナは苦笑いをする。そう言われてみるとなるほど川に似ていると。穏やかな時と荒れた時の差が著しい。
もっともあれは川としてはいつも変な流れとなるが。
「それにしても奇妙な組み合わせですね。統一性がなくて大雑把ですが、嫌味でしょうか?」
「こんな手の込んだ嫌味なんてしてたまるものか。キルシュにヒントを頼んだら自分で選べと言われてな。それで店員に聞こうとしたら駄目だよそれじゃ心が籠らないとかなんとか言われてそれっぽくしたんだ」
「なるほど隊長がセンス良くまとめたら嘘ッぽいですもんね」
「なぜ私が上手く選ぶと嘘ッぽくなるのだ?」
「いえいえとにかくお疲れ様でした。せっかくここまでやって文句の一つでも垂れられましたら、お返しに花束で引っ叩いて帰ればいいのですからそこは便利ですよね」
「何が便利なんだ。そんなことしたらもったいないだろ。持って帰る……とはいえ花が他に何の役に立つのかなんか知らないがな。供物以外としてはな」
「もっともで。ちょっと御拝借を」
とアルは花束を手に取り何やら改めだした。なにか、もんだいでも、あるというのか?
「ふん、ふん、あの隊長。花言葉の件はお伺いしましたか」
お伺いどころか店員とキルシュがぺらぺらぺらぺら説明しだしてうるさいほどであったが……何も内容が思い出せない、いやそれどころか説明を受けた段階で覚えてすらいない。
それらの言葉を心が受け入れないように右の耳から左の耳へまたはその逆、と何もかも分からないままである。
「一応聞いた」
「そして覚えていないですよね? そんなものですよ花言葉なんか。興味のない男には全く頭に残らないものです。けど覚えておかないとあとあと面倒なことになるかもしれませんね」
「その可能性は大いにあるな。アルは覚えているか? 知っているものがあれば教えて貰いたいのだが」
眼鏡をあげ真剣な面持ちでアルはまず青い花を指差した。
「これは、憎悪です」
あまりの言葉にジーナが呆気にとられているのを気にせずにアルは続ける。
「こちらは別離」
それが赤い花。
「その隣が破局」
次は緑の花。
「こっちが刹那」
最後は紫の花。
「おや……おかしいですね」
おかしいのはお前の発言の方だよとまだ言えずにいるとアルは聞いてきた。
「黄色の花はありませんでしたか? その一点でもあれば全体的に軽い色彩になったのですけど」
「その次元の以前の問題だろ。聞きたいのだが、その花言葉は本当なのか? あまりにも不吉過ぎてびっくりしたぞ」
ハイネに対する反発心からの嘘だとジーナは思ったがアルは首を振った。
「花言葉は各地によって意味が違います。正直何とでも言えるものなのですが、中央と僕の故郷とでも正反対になるのです。これは中央への反発心によるものでしょうけどね。ですから隊長は別に中央の花言葉を知っておけばいいのですが、どうせ覚えていませんでしょうし」
得意そうに見返してきたアルの顔を見て言い返したかったが、その指摘は真実であるために目を逸らすとそれが答えだと彼は判断した。
「つまり僕の故郷の意味と反対だと知ればいいのです。いまので覚えられましたよね?」
青い憎悪に赤い別離に緑の破局に紫の刹那、と歌われるようにジーナの脳内で色と共に刻まれていった。
「あっあぁ、どうしてか覚えられた」
「でしょうね。隊長的に相応しい色だらけですから、あっそうだ黄色だ黄色。売り切れていました?」
「ああ黄色の花はキルシュに反対された。なんでか知らんが」
「へぇそうですか。まぁ彼女もセンス悪そうですからね」
そういうことでもなさそうだが、ジーナは何も言わないことにした。
「ソグにあった花なんだがそれはどんな花言葉か知っているか?」
「あの時期の黄色の花なら、あれはたしか『つくりもの』といった意味でしたね」
作りもの? とジーナは先ほど聞いた花言葉よりも不穏なものを感じた。
「……そうだとしたら中央での意味は、自然? とかか」
「そうなりますね。自然とか本物とか真実とか」
だとしたらその逆のは、偽物や嘘? そうだとしたら私はいったいなにを見ていたというのか?
あの龍の館の庭で……誰と?
選び終わった際にキルシュが喜んでくれてホッとはしたが、何が目的なのか半分見失いそうになっているとジーナは感じた。
自分はいったいに何をしているのだろうかと。
「それは奉納物でしょうか」
いつの間にか隣にアルが並んで歩いていることに気付いた。今日はやたらと人が近づいてくる。そして何故か自分はそれに気づかない。
「おっおう、そういってもいいな。私には分からないがどうしても今日は花束が必要だとのことだ」
「まるで荒れ狂う川への供物のようですねそれ」
氾濫した川、と例えられジーナは苦笑いをする。そう言われてみるとなるほど川に似ていると。穏やかな時と荒れた時の差が著しい。
もっともあれは川としてはいつも変な流れとなるが。
「それにしても奇妙な組み合わせですね。統一性がなくて大雑把ですが、嫌味でしょうか?」
「こんな手の込んだ嫌味なんてしてたまるものか。キルシュにヒントを頼んだら自分で選べと言われてな。それで店員に聞こうとしたら駄目だよそれじゃ心が籠らないとかなんとか言われてそれっぽくしたんだ」
「なるほど隊長がセンス良くまとめたら嘘ッぽいですもんね」
「なぜ私が上手く選ぶと嘘ッぽくなるのだ?」
「いえいえとにかくお疲れ様でした。せっかくここまでやって文句の一つでも垂れられましたら、お返しに花束で引っ叩いて帰ればいいのですからそこは便利ですよね」
「何が便利なんだ。そんなことしたらもったいないだろ。持って帰る……とはいえ花が他に何の役に立つのかなんか知らないがな。供物以外としてはな」
「もっともで。ちょっと御拝借を」
とアルは花束を手に取り何やら改めだした。なにか、もんだいでも、あるというのか?
「ふん、ふん、あの隊長。花言葉の件はお伺いしましたか」
お伺いどころか店員とキルシュがぺらぺらぺらぺら説明しだしてうるさいほどであったが……何も内容が思い出せない、いやそれどころか説明を受けた段階で覚えてすらいない。
それらの言葉を心が受け入れないように右の耳から左の耳へまたはその逆、と何もかも分からないままである。
「一応聞いた」
「そして覚えていないですよね? そんなものですよ花言葉なんか。興味のない男には全く頭に残らないものです。けど覚えておかないとあとあと面倒なことになるかもしれませんね」
「その可能性は大いにあるな。アルは覚えているか? 知っているものがあれば教えて貰いたいのだが」
眼鏡をあげ真剣な面持ちでアルはまず青い花を指差した。
「これは、憎悪です」
あまりの言葉にジーナが呆気にとられているのを気にせずにアルは続ける。
「こちらは別離」
それが赤い花。
「その隣が破局」
次は緑の花。
「こっちが刹那」
最後は紫の花。
「おや……おかしいですね」
おかしいのはお前の発言の方だよとまだ言えずにいるとアルは聞いてきた。
「黄色の花はありませんでしたか? その一点でもあれば全体的に軽い色彩になったのですけど」
「その次元の以前の問題だろ。聞きたいのだが、その花言葉は本当なのか? あまりにも不吉過ぎてびっくりしたぞ」
ハイネに対する反発心からの嘘だとジーナは思ったがアルは首を振った。
「花言葉は各地によって意味が違います。正直何とでも言えるものなのですが、中央と僕の故郷とでも正反対になるのです。これは中央への反発心によるものでしょうけどね。ですから隊長は別に中央の花言葉を知っておけばいいのですが、どうせ覚えていませんでしょうし」
得意そうに見返してきたアルの顔を見て言い返したかったが、その指摘は真実であるために目を逸らすとそれが答えだと彼は判断した。
「つまり僕の故郷の意味と反対だと知ればいいのです。いまので覚えられましたよね?」
青い憎悪に赤い別離に緑の破局に紫の刹那、と歌われるようにジーナの脳内で色と共に刻まれていった。
「あっあぁ、どうしてか覚えられた」
「でしょうね。隊長的に相応しい色だらけですから、あっそうだ黄色だ黄色。売り切れていました?」
「ああ黄色の花はキルシュに反対された。なんでか知らんが」
「へぇそうですか。まぁ彼女もセンス悪そうですからね」
そういうことでもなさそうだが、ジーナは何も言わないことにした。
「ソグにあった花なんだがそれはどんな花言葉か知っているか?」
「あの時期の黄色の花なら、あれはたしか『つくりもの』といった意味でしたね」
作りもの? とジーナは先ほど聞いた花言葉よりも不穏なものを感じた。
「……そうだとしたら中央での意味は、自然? とかか」
「そうなりますね。自然とか本物とか真実とか」
だとしたらその逆のは、偽物や嘘? そうだとしたら私はいったいなにを見ていたというのか?
あの龍の館の庭で……誰と?