旦那様に「君を愛する気はない」と言い放たれたので、「逃げるのですね?」と言い返したら甘い溺愛が始まりました。
また逃げるのですか?
ディナーが始まって数十分、まだ私とセルト様は一言も会話をしていない。

ここは紳士らしくセルト様から話を降って欲しいところだったが、そうもいかないらしい。


「セルト様、なぜ急に私と一緒にディナーをとりたいと仰ったのですか?」


セルト様の視線が私に向く。

普段目の合いにくいセルト様と視線が合うだけで、心臓がドクンと跳ねたのが分かった。

そんな動揺を悟られないように私はいつもより表情に力を入れてしまう。


「レシールが逃げるなと言ったのだろう?」


まるで何か悪巧(わるだく)みをしているのではないかと思ってしまうような笑みをセルト様が浮かべている。
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