旦那様に「君を愛する気はない」と言い放たれたので、「逃げるのですね?」と言い返したら甘い溺愛が始まりました。
「逃げなければ勝ち。という単純な勝負ですわ」

「どういう意味だ?」

「簡単です。この部屋から先に出た方が負けですわ」

私の勝負の内容にセルト様の表情に疑問が浮かんでいる。

「ここは私の部屋だ。私が逃げるとはどういうことだ?」

「それは勝負が始まってからのお楽しみですわ。ここはセルト様の部屋。先に出ていく可能性はどう考えても私の方が高いでしょう。こんな有利な勝負なら逃げはしませんよね?」

私の挑発的な言葉にセルト様が私の瞳をじっと見つめる。

まるで瞳の奥から私の思惑全て見透かされているような気持ちになる。



「むしろ君の部屋で(おこな)ってくれても良いくらいだ」



「それでこそ私が勝負を仕掛けるに相応しい旦那様ですわ」



私は残っていた紅茶を飲み干して、カップをテーブルに戻す。
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