旦那様に「君を愛する気はない」と言い放たれたので、「逃げるのですね?」と言い返したら甘い溺愛が始まりました。
どうか赤く染まっていたり、動揺を悟られるような顔をしていませんように、そんな願いばかりが頭をよぎる。



「口付け程度で私に勝てると?」


「そんな顔をして強がっても何の意味もないと思うが」



本当に私の顔は赤くなっているのだろうか。

鏡がないから分からない。

この人が私を騙しているだけかもしれない。

まだ負けが決まったわけじゃない。

最後まで諦めないことがどんな勝負でも勝利する秘訣だ、と何とか自分に言い聞かせて心を落ち着かせる。

「レシール、君は負けることが嫌いみたいだな」

「負けるのが好きな物好きはそうそういないでしょう?」

「ははっ、そうだな。俺も負けるのは嫌いだ。だから、悪いが勝たせてもらう」
< 21 / 44 >

この作品をシェア

pagetop