私をフッた元上司と再会したら求愛された件
「……園崎ちゃん? どうしたの?」

 思考の海に沈んでいたら、いつの間にか先輩が心配げにこちらを見ていて、私は慌てて笑顔を作った。

「戸川さんが油井さんと付き合ってるの知らなかったんで、びっくりしちゃいました」

「だよねー。でもお似合いじゃない? あつらえたようにぴったりっていうか」

「ほんとほんと。私も戸川さんかっこいいなーって思ってたけど、高嶺の花すぎて早々に諦めたもん。それに戸川さん誰に対しても塩対応だし、脈なさすぎて。やっぱりイケメンが選ぶのは美女だよねー」

 先輩ふたりが笑うのを作り笑いで応じる。

 最近は戸川さんが塩対応と思うことはなくなっていたけれど、それは私たちの間に共通の話題があったからだ。戸川さんはハムちゃんが好きで誰かと推しトークをしたかっただけで、私と話したいわけじゃなかった。観測できた脈は完全に思い違いだったんだ。

 だから実ることのないこの恋は諦めよう。そう決めて、この恋心は封印するつもりだった。

 でも納得はできても、そう簡単に切り替えることはできないのが人間の難しいところだ。一緒に仕事をしていると気付けば目で彼を追ってしまうし、話しかけられたら舞い上がる自分がいた。

 おかげで、プロジェクトが終わる頃になっても、私は未練がましく戸川さんのことが好きだった。
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