私をフッた元上司と再会したら求愛された件
「…………ごめん、園崎とは付き合えない」

 長い長い沈黙の後、突きつけられたその答えは、容赦なく私の胸に風穴をあけた。

 やっぱりダメだった。わかっていたけれど涙が込み上げそうになる。みっともない泣き顔を見せたくなくて、私は口角に力を込めて笑顔を作った。下手なのは百も承知。でも泣くよりマシのはずだ。

「……はい。受け止めていただいてありがとうございました。すみません。こんなこと言っちゃって。ご迷惑だったと思うんですけど」

「迷惑なんて思ってない。でも、ごめん……」

 その声には本音が滲んでいるのがわかって、いっそう泣きたくなった。

「お疲れ様でした。私、こっちなんで、お先に失礼します」

 駅とは違う方向を指差して、急いで戸川さんに別れを告げた。一刻も早くみじめな自分を彼の視界から消し去りたくて、私は足早に近くにあったラーメン屋に入る。

 ムワリと油っこい匂いが満腹の私の胃袋を刺激して、私は入ったことを後悔した。このまま店を出るわけにも行かないので、まったくお腹は空いていないのに自棄になってトッピング全部乗せの家系ラーメンを注文してしまった。お店の人に食券を渡して空いているカウンター席に座る。堪えていた涙がとうとう溢れ出してきて、渡された温かいおしぼりを目に当てて涙がこぼれ落ちるのを防いだ。

「あーあ……」

 連続失恋記録、また更新。もう立ち直れる気がしない。

 しばらくしてやってきたラーメンは罪深いほど山盛りだった。でも今よりもさらに苦しい思いをすれば、この苦しみから少しでも逃れられる気がして、私は無心でラーメンを平らげた。
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