私をフッた元上司と再会したら求愛された件
「いいんですか? 本来ならそこまで私が考えるべきなのに……」

「当たり前だろ。クライアントとエージェンシーって立場の違いはあるけど、ひとつのプロジェクトを遂行するパートナーでもあるんだ。ディスカッションを重ねて、一緒に良い広告を作っていきたい」

「一緒に……」

 思えば今までの私はひとりよがりだったのかもしれない。忙しいからとクライアントとの対話を疎かにして、自分の頭の中でだけで考えてしまっていた。

「コンサル時代も、クライアントのニーズ把握がうまかっただろ? だから園崎と一緒なら良い広告ができると思ってる」

 その言葉に背中を押してもらえた気がした。

 自分の頭の中で勝手に考えるのではなく、ちゃんと戸川さんやラクリノの思いを理解したい。そう思って、その日のミーティングは動画構成ではなく、ラクリノについて詳しい話を聞くことにした。

 ラクリノは、空き家リノベーション事業を展開することで地方への移住を促したいという、CEOの与田さんの熱い思いで設立された。今は自治体との連携も交渉していて、地方創生に貢献することを目指している。

 さっき提案した広告動画は、中古物件のリノベーションでおトクに物件購入ができるという部分を推していたから、ラクリノが目指す地方創生の要素を入れられていなかった。戸川さんが納得しなかったのも腑に落ちる。

「リノベーションをきっかけに地方移住をすると、それまでの生活がガラリと変わるから、移住先での暮らしの魅力も合わせて伝えていきたいんだ」

 そう話す戸川さんの瞳はキラキラしていて、私も良い広告を作りたいと強く思った。
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