私をフッた元上司と再会したら求愛された件
「ご、ごめんなさい……」

「具合悪いならタクシーでも……って、あれ、もしかして戸川くん?」

 私の視線の先を追ったのか、一条さんがそう呟く。

「あ……そう、ですね……彼女さんと一緒にいるみたいで……」

 彼女――自分で言って自分で傷ついた。やっぱり私、また戸川さんのことが好きになってたんだ。それでまた、同じ人に失恋している。私のことを忘れられなかったという冗談を真に受けて……バカみたいだ。

 乾いた笑いが喉の奥から込み上げる。体に力が入らなくて、歩かなければいけないのに足を前に出せない。

「ごめんなさい、一条さん。先に帰っていただいて――」

「やっぱりタクシーを呼ぶよ。そんな青い顔してるのに、そのまま帰すわけにはいかないから」

 そう言って、一条さんは手を挙げて走っているタクシーを拾ってくれた。

「俺ならそんな顔させないんだけどなぁ。戸川くんに負けず劣らずいい男だと思うけど、俺にしとかない?」

 私を笑わせるためか、一条さんがいつもの冗談を言ってくる。色んな人を口説いているので、本気じゃないのはわかっているけれど、励ましてくれようとしてくれているのはわかる。その優しさが今は身に沁みた。
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