私をフッた元上司と再会したら求愛された件
「は、はい。明日までには間に合わせるので」

「そうじゃなくて。追加の分析、結構内容ヘビーだったし、ひとりで資料まで作るのはしんどいだろ」

 そう言って、戸川さんは空いている私の隣の席に座った。

「俺も手伝う。分析はまだ残ってる?」

 まさかの発言に、私は大きく目を見開いた。

「い、いえいえいえいえ! 戸川さんがやるような仕事じゃないですし、私ひとりでも大丈夫ですので!」

「クライアントの要望をヒアリングしきれてなかったのは、チームの問題だ。園崎ひとりで背負い込むことじゃないから、気にしなくていい」

 戸川さんの口調は淡々としている。ま私に優しくしているわけではなく、上司として当然の気遣いをしているだけなのは、声色でわかる。でもその気遣いに甘えてしまうのは申し訳ない。

「で、でも」

「そういう遠慮はいらないし、時間がもったいないからさっさとやるぞ。分析残ってるなら後は俺がやるから、園崎は資料に落とし込んでいって」

 有無を言わさぬ口調で言い切ると、戸川さんは自分の席からパソコンを持ってきて、また私の隣に座った。

 これ以上遠慮していると逆に怒られるやつだ。申し訳ない気持ちでいっぱいになりながらチャットでデータを送る。

「ありがと」

 戸川さんは短く言うと、すぐさま手を動かし始めた。

 一瞬見ただけでどう分析すればいいのか理解したんだろう。キーボードを叩く手は止まらない。その速さに驚嘆しながら私も手を動かした。

 爆速で分析を終わらせた戸川さんに資料作りも手伝ってもらい、二時間ほどで全部の作業が終わった。
< 4 / 58 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop