私をフッた元上司と再会したら求愛された件
「美羽?」

「……戸川さんみたいな完璧な人が私のことを好きになるはずないって、ずっと思い込んでいました。付き合いたいって言ってくれたのも冗談なのかなって」

「俺も完璧なんかじゃないよ。情けない普通の人間だ」

 ほろ苦く笑う戸川さんの頬に手を当てて、戸惑いの色を映す彼の瞳をじっと見つめる。仕事中のクールな表情も、仕事モードが抜けた時に見せてくれる笑顔も好きだけれど、こんな顔も好きだなと思った。

「うん。だから、私も自分を卑下するのはもうやめます。……戸川さん、好きです……この二年間で、私が好きになったのは戸川さんだけです……」

 すると、ギュッと抱え込まれるように抱きしめられた。ちょうど戸川さんの胸に私の耳が当たる。聞こえてくる彼の鼓動はとても速かった。

「うん。俺も美羽が好きだ。絶対大切にする」

 戸川さんは噛み締めるように言った。伝える言葉すら大切にしてくれているみたいだ。体の水位が上がるように、幸せで満たされる。抱きしめられているせいか体がポカポカする。幸せって温かいんだな、なんてメルヘンなことを思いつつ、私は戸川さんの顔が見たくなって彼の胸から顔を上げた。
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