私をフッた元上司と再会したら求愛された件
「もう、飲み過ぎですよ」

「ごめん。ちょっと調子乗った」

 ウトウトする与田さんを肩に担ぐ玲さんをジト目で諌めると、彼は苦笑いを浮かべた。ザルの一条さんはしっかりとした足取りだが、何やらニマニマしている。

「戸川くんは与田くんを送って行かなきゃだし、園崎は俺が送って行こうか?」

「結構です。孝次郎はタクシーにぶちこみますから」

 私が何か言う前に玲さんが食い気味に答える。そして宣言通りタクシーを拾うと、与田さんを押し入れてしまう。玲さんが運転手さんに住所を告げているけれど、玲さんと一緒に与田さんを送って行った方がいいんじゃ……。

 心配していたところで、一条さんが私の横からスルッと体を滑り込ませて、タクシーに乗り込んでいた。

「仕方ないから与田くんは俺が送ってくよ。元々俺が飲ませちゃったしね」

「いいんですか?」

「園崎は戸川くんと仲良く帰りな」

「……ありがとうございます」

 玲さんが頭を下げると、一条さんは少し驚いたように笑って、手をヒラヒラと振った。扉が閉まり、一条さんたちを乗せたタクシーが夜の街に消えていくのを見送った後、私たちはどちらからともなく顔を見合わせる。
「じゃあ、帰ろうか」
 差し出された手を私は笑顔で握った。
< 55 / 58 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop