婚活!~絶対幸せになれる婚、探してます~
艶めいた笑みを残して私を解放し、通路の奥にあるお手洗いへと向かう彼。

えっと、今のは……。

状況がよくわからなくて、眉をハの字にしたまま笑顔を凍りつかせる。

口説かれた? いや、まさか。我が社の王子様がその辺にいるモブ女子の私に興味を持つわけがない。

もしかして、めちゃめちゃ酔っていたとか?

そう考えると、ひとりでお手洗いに行かせて大丈夫だったか心配になる。

倒れてないといいんだけど……。もしも帰りが遅かったら、聖澤さんに様子を見に行ってもらおう。

それにしても不思議なのは、あれだけ素敵だと思っていた美作マネージャーに至近距離で囁かれても混乱するばかりでドキドキしなかったこと。

そりゃあ驚いてそれどころじゃなかったってのは大きいけれど、一ミリも浮かれないのは自分でも意外だった。

そんなことを考えながら、店内のパーテーションをぐるりと回って席に戻ろうとすると。

「それにしても安心しちゃった。世那くんが桃代さんと仲良くしているみたいで」

自分の名前が出てきたことに驚いて足が止まる。

安芸野さんの声だけれど……先ほどまでは『聖澤くん』と呼んでいたはずなのに、いつの間にか『世那くん』になっていた。

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