婚活!~絶対幸せになれる婚、探してます~
彼は今、なにを考えているのだろう?

拒むことを忘れ、ただ彼の緩慢な動きを見つめていると。

ゆっくりと近づいてきた彼の顔が、わずかな距離を残してぴたりと止まった。

「っ、……ごめん」

彼が謝罪とともに慌てて顔を離す。その声で魔法が解けたかのように我に返った。

冷静になった今になって胸がドキドキと高鳴ってくる。

彼は自身の前髪をかきあげ、決まりが悪そうに目を逸らす。

「恋愛しないって言ってるそばから、気のある素振り見せてたら世話ないよな」

後悔をぽつりとひとつ口にして、苦い表情のまま立ち上がった。

「説明済んだし、帰る」

簡潔に言い置くと、荷物を手にして部屋を出ていく。

「あの……」

慌ててそのあとを追う私。革靴を履いた彼がふっと口もとを緩ませた。

「婚活、頑張れよ」

私の頭にポンと手を置いて柔らかく微笑む。そのまま踵を返すと、こちらの返事も待たずに玄関を出ていってしまった。

……笑顔を振りまくのは苦手だって言ってたのに。

最後のあれは間違いなく取り繕った笑顔だ。嫌な距離の置き方をされてしまった。

頑張れなんて、言われても……。

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