続・ネコのお話聞き屋さん
生温い風が強く雨の匂いがするある夕方、
地下鉄の駅の入り口の脇に子猫がいた。

- お話聞き屋さんです。
茶色の三毛猫のとなりに置いてある大きなスケッチブックに、黒マジックの丸文字でそう書いてあった。

(何これ。いたずら?)
子猫のまんまるの目がくりくりしている。良くできた人形だなぁ。(まぁ、私には関係ないけど)
だって、私、これから死ぬんだもの。

- お話聞く?
スケッチブックの文字が変わった。良くできたおもちゃだなぁ。(まぁ、私には関係ないけど)
家に帰りたくない。居場所がない。母は私のメッセージを見ただろうか。夫は。義母は。
「死にます」と言う。

小さいものを見ると全部娘に見える。可愛さなんて感じない。憎い。ただ憎い。ただただ憎い。

- ネコのお名前ねぇ、盛*冷麺。
「はぁ」
- 小野小町だったかも。
「はぁ」
- ゲイ*ー・オー*ドマン。
「はぁ」

- ネコ、抱っこする?
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