めぐり逢い 憧れてのち 恋となる【書籍化】
4年分の想い
「なにがどうなって、こんなことになったんでしょう」
「それは俺が聞きたい」
スイートルームでなくて申し訳ありません、と言って案内されたダブルの部屋で、花穂と大地はソファに並んで座る。
目の前のテーブルには、ワインやコース料理が所狭しと並べられていた。
「とにかく、いただくか」
「そうですね」
グラス2つにワインを注ぎ、「メリークリスマス」と乾杯する。
「美味しいですね。うちでいつもの適当ご飯を食べるつもりが、こんなに豪華なフルコースをいただけるなんて。サンタさんからのクリスマスプレゼントかな?」
花穂はひとりごちて、ふふっと微笑む。
食後に紅茶を淹れてクリスマスケーキを食べながら、花穂は大地が口数少ないのが気になった。
「浅倉さん、なにかありましたか?」
「いや、別に」
「そうですか? なんだか少し元気がないです。気になることでもあるんですか?」
「気になること……」
大地は自問自答するように呟くと、ティーカップをテーブルに置いて花穂に向き直る。
「青山、さっき銀座でジュエリーショップの店長と話してたことって……」
「あ、はい。チェレスタのデザイナーになろうと決めた時のことですか?」
「そう。それって……、青山の中では今も大切な思い出なのか?」
「もちろんです。4年間忘れたことはありません」
「でも、いつまでも過去に囚われるのもどうかと思うぞ。その思い出は封印して、前だけ見た方がお前の為だ」
「え? どういう意味ですか?」
花穂は正面から大地を見つめて問い正す。
心の中にヒヤッと冷たい空気が流れ込んだような気がした。
「どうして浅倉さんにそんなことを言われないといけないのでしょうか」
「それは、だって。もっと大きな目標に目を向けて、それだけに向かって意識を集中した方が……」
「余計なお世話です。私にとって、あの4年前の出来事がデザイナーとしての始まりなんです。それを忘れたら、今の私もこれからの私も、デザイナーとしていられません」
「けど、お前は自分の中でその思い出を美化しすぎてないか? その時に見たデザインも、お前が4年間も大事にするほど大したものじゃなかったかもしれないし」
そこまで言うと、大地はハッとしたように言葉を止めた。
じっと見つめられて、ようやく花穂は気づく。
自分がぽろぽろと大粒の涙をこぼしていることに。
「それは俺が聞きたい」
スイートルームでなくて申し訳ありません、と言って案内されたダブルの部屋で、花穂と大地はソファに並んで座る。
目の前のテーブルには、ワインやコース料理が所狭しと並べられていた。
「とにかく、いただくか」
「そうですね」
グラス2つにワインを注ぎ、「メリークリスマス」と乾杯する。
「美味しいですね。うちでいつもの適当ご飯を食べるつもりが、こんなに豪華なフルコースをいただけるなんて。サンタさんからのクリスマスプレゼントかな?」
花穂はひとりごちて、ふふっと微笑む。
食後に紅茶を淹れてクリスマスケーキを食べながら、花穂は大地が口数少ないのが気になった。
「浅倉さん、なにかありましたか?」
「いや、別に」
「そうですか? なんだか少し元気がないです。気になることでもあるんですか?」
「気になること……」
大地は自問自答するように呟くと、ティーカップをテーブルに置いて花穂に向き直る。
「青山、さっき銀座でジュエリーショップの店長と話してたことって……」
「あ、はい。チェレスタのデザイナーになろうと決めた時のことですか?」
「そう。それって……、青山の中では今も大切な思い出なのか?」
「もちろんです。4年間忘れたことはありません」
「でも、いつまでも過去に囚われるのもどうかと思うぞ。その思い出は封印して、前だけ見た方がお前の為だ」
「え? どういう意味ですか?」
花穂は正面から大地を見つめて問い正す。
心の中にヒヤッと冷たい空気が流れ込んだような気がした。
「どうして浅倉さんにそんなことを言われないといけないのでしょうか」
「それは、だって。もっと大きな目標に目を向けて、それだけに向かって意識を集中した方が……」
「余計なお世話です。私にとって、あの4年前の出来事がデザイナーとしての始まりなんです。それを忘れたら、今の私もこれからの私も、デザイナーとしていられません」
「けど、お前は自分の中でその思い出を美化しすぎてないか? その時に見たデザインも、お前が4年間も大事にするほど大したものじゃなかったかもしれないし」
そこまで言うと、大地はハッとしたように言葉を止めた。
じっと見つめられて、ようやく花穂は気づく。
自分がぽろぽろと大粒の涙をこぼしていることに。