めぐり逢い 憧れてのち 恋となる【書籍化】
「花穂、おいで」
その日の夜。
大地のマンションで夕食を作って食べ、食器洗いを済ませると、大地が花穂をソファに促した。
花穂が隣に座ると、大地は手を伸ばして花穂の肩を抱き寄せる。
「花穂、本当はコンペやりたくない?」
いきなりそう言われて、花穂は大地の顔を見上げた。
「ううん、そんなことない。だけど少し心配で……」
「なにが心配?」
大地は花穂の髪をなでながら、優しく尋ねる。
「だって、織江さんやフィアンセの方と競うことになるでしょう? 勝っても負けても、大地さんの心境は複雑だろうなって。関係がギクシャクしたりしない? 私にとって織江さんは、この先もずっと変わらない大切な人。だからこそ大地さんも、織江さんやフィアンセの方と気まずくなってほしくないの」
サラサラと弄ぶように花穂の髪に指を滑らせていた大地は、やがて花穂の両手を握り、真っ直ぐに見つめた。
「花穂。俺にとって織江やフィアンセの笹本は、この先もずっと変わらないライバルであり、仕事仲間だ。同じ業界に身を置く者同士、互いに切磋琢磨して刺激を与え合いつつ、より良いデザインで社会を変えていきたい。今回のコンペはそのひとコマにすぎず、全てじゃないんだ。勝っても負けても、俺たちの関係は変わらない。それとな、花穂」
大地は急に表情を変え、ニヤリとほくそ笑む。
「俺がコンペであいつらに負けるとでも思ってる? この俺が認めた、誰よりも信頼できるデザイナーと一緒に戦うんだぞ。負ける訳がない」
「え……」
そのデザイナーって……と、花穂は思わずうつむいた。
「花穂、俺は誰よりも花穂の才能を認めてる。花穂は心から愛する俺のたったひとりのパートナーだ」
「え、あの。仕事のパートナーにそれはおかしいです」
「どこがだ? 俺にとって花穂は、公私ともに唯一無二の存在だからな。誰よりも信頼する、そして親愛なるパートナーだ」
そこまで言ってから、大地はふっと笑みをもらした。
「なんて、小難しいこと言うのはガラじゃないな。花穂、俺は誰よりも花穂が大切だ。ずっとそばにいてほしい。なにも心配するな。コンペで必ず勝って大きな仕事を掴み、改めて花穂を俺に惚れ直させてみせる」
いつもの自信満々の口調に、花穂は思わずクスッと笑う。
「はい、私も全力でサポートします。大地さんが誰よりもかっこいいから、他の人なんて目に入らない。あなただけを見て、あなただけを信じて、一緒に戦います」
「ああ。必ず二人で勝ち取ろう」
「3人で、でしょ? 大森さんも入れて」
「まあ、半人分くらいな」
「だめです。ちゃんと3人で戦いましょう。私たちならすごいことをやってのけるはず。でしょ?」
「ああ」
大地は頷くと、そっと花穂の頬に手を添える。
それは甘いキスの合図。
花穂は目を閉じて胸を高鳴らせる。
柔らかい唇が重なり、花穂の胸は切なさでキュッと傷んだ。
その日の夜。
大地のマンションで夕食を作って食べ、食器洗いを済ませると、大地が花穂をソファに促した。
花穂が隣に座ると、大地は手を伸ばして花穂の肩を抱き寄せる。
「花穂、本当はコンペやりたくない?」
いきなりそう言われて、花穂は大地の顔を見上げた。
「ううん、そんなことない。だけど少し心配で……」
「なにが心配?」
大地は花穂の髪をなでながら、優しく尋ねる。
「だって、織江さんやフィアンセの方と競うことになるでしょう? 勝っても負けても、大地さんの心境は複雑だろうなって。関係がギクシャクしたりしない? 私にとって織江さんは、この先もずっと変わらない大切な人。だからこそ大地さんも、織江さんやフィアンセの方と気まずくなってほしくないの」
サラサラと弄ぶように花穂の髪に指を滑らせていた大地は、やがて花穂の両手を握り、真っ直ぐに見つめた。
「花穂。俺にとって織江やフィアンセの笹本は、この先もずっと変わらないライバルであり、仕事仲間だ。同じ業界に身を置く者同士、互いに切磋琢磨して刺激を与え合いつつ、より良いデザインで社会を変えていきたい。今回のコンペはそのひとコマにすぎず、全てじゃないんだ。勝っても負けても、俺たちの関係は変わらない。それとな、花穂」
大地は急に表情を変え、ニヤリとほくそ笑む。
「俺がコンペであいつらに負けるとでも思ってる? この俺が認めた、誰よりも信頼できるデザイナーと一緒に戦うんだぞ。負ける訳がない」
「え……」
そのデザイナーって……と、花穂は思わずうつむいた。
「花穂、俺は誰よりも花穂の才能を認めてる。花穂は心から愛する俺のたったひとりのパートナーだ」
「え、あの。仕事のパートナーにそれはおかしいです」
「どこがだ? 俺にとって花穂は、公私ともに唯一無二の存在だからな。誰よりも信頼する、そして親愛なるパートナーだ」
そこまで言ってから、大地はふっと笑みをもらした。
「なんて、小難しいこと言うのはガラじゃないな。花穂、俺は誰よりも花穂が大切だ。ずっとそばにいてほしい。なにも心配するな。コンペで必ず勝って大きな仕事を掴み、改めて花穂を俺に惚れ直させてみせる」
いつもの自信満々の口調に、花穂は思わずクスッと笑う。
「はい、私も全力でサポートします。大地さんが誰よりもかっこいいから、他の人なんて目に入らない。あなただけを見て、あなただけを信じて、一緒に戦います」
「ああ。必ず二人で勝ち取ろう」
「3人で、でしょ? 大森さんも入れて」
「まあ、半人分くらいな」
「だめです。ちゃんと3人で戦いましょう。私たちならすごいことをやってのけるはず。でしょ?」
「ああ」
大地は頷くと、そっと花穂の頬に手を添える。
それは甘いキスの合図。
花穂は目を閉じて胸を高鳴らせる。
柔らかい唇が重なり、花穂の胸は切なさでキュッと傷んだ。