めぐり逢い 憧れてのち 恋となる【書籍化】
コンペ
コンペに向けて何度も大地や大森と会議を重ね、入念に準備をする。
たとえ他にどんな企業が参加していたとしても関係ない。
自分たちのやるべきことをやるだけだ。
そして必ず選ばれてみせる。
3人はそう固く心に決めていた。
迎えた3月下旬のコンペ当日。
スーツに身を包んだ3人は、会場となる美術館に向かった。
「花穂!」
受付を済ませて控え室に入ると、織江が手を挙げて立ち上がった。
「織江さん! お久しぶりです。お元気でしたか?」
「うん、元気よ。花穂も元気だった?」
「はい!」
張り詰めていた緊張感が少しほぐれる。
「なーんか綺麗になっちゃって。大地に愛されてるね、花穂」
小声でささやかれて、花穂は耳まで真っ赤になる。
つき合い始めたことは伝えてあったが、直接織江と会うのはそれ以来初めてだった。
「あの、えっと。あ! 織江さんのフィアンセの方は?」
「ん? ああ、そうね。紹介するわ。充!」
織江に呼ばれて、窓際の席にいた男性が振り返る。
(あの人が笹本さん? 俳優さんみたい)
彫りの深い整った顔立ちの男性が、にこやかに近づいて来た。
「紹介するわ。彼が婚約者の笹本 充よ。充、この子が私の可愛い花穂」
ああ!と笹本は笑顔で花穂と握手する。
「初めまして、笹本です。織江からいつも聞かされてました。あんまりあなたのことばかり話すから、正直少しヤキモチ焼いたくらいです」
ええ?と花穂は驚いて仰け反る。
「青山と申します。そんな、私こそ織江さんにお世話になりっぱなしで……」
「お会いできて嬉しいです。それで、彼は今どちらに? ご一緒ではないのですか?」
彼!?と、花穂は目を白黒させる。
「えっと、あの、浅倉と大森は、車に荷物を取りに行ってまして……。あ、戻って来ました」
部屋に入って来た二人は、おっ!という顔でこちらにやって来た。
「織江、久しぶり」
「久しぶり。相変わらずね、大地も大森も」
「ああ。元気そうでなにより」
そして大地は笹本にも向き合う。
「久しぶりだな、笹本」
「お久しぶりです、浅倉さん。またコンペでお会いできて、とても光栄です。プレゼン、とくと拝見します」
「随分余裕だな。こっちもお手並み拝見といこう」
「負けませんよ」
「こちらこそだ」
不敵な笑みで対峙する二人に、花穂はヒヤヒヤする。
だが織江はそんな二人に、なにやら感慨深げな表情を浮かべていた。
「織江さん?」
「ん?ああ、なんだか嬉しくて。二人はずっとこんなふうに良いライバルだったから。また昔に戻ったみたい」
「そうなんですね」
花穂は大地の横顔を見つめる。
かつて笹本に負け、スランプに陥った大地。
だが今は自信に満ち溢れている。
(大地さんなら勝てる。私も全力でサポートしてみせる)
決意を込めて花穂は唇を引き結んだ。
たとえ他にどんな企業が参加していたとしても関係ない。
自分たちのやるべきことをやるだけだ。
そして必ず選ばれてみせる。
3人はそう固く心に決めていた。
迎えた3月下旬のコンペ当日。
スーツに身を包んだ3人は、会場となる美術館に向かった。
「花穂!」
受付を済ませて控え室に入ると、織江が手を挙げて立ち上がった。
「織江さん! お久しぶりです。お元気でしたか?」
「うん、元気よ。花穂も元気だった?」
「はい!」
張り詰めていた緊張感が少しほぐれる。
「なーんか綺麗になっちゃって。大地に愛されてるね、花穂」
小声でささやかれて、花穂は耳まで真っ赤になる。
つき合い始めたことは伝えてあったが、直接織江と会うのはそれ以来初めてだった。
「あの、えっと。あ! 織江さんのフィアンセの方は?」
「ん? ああ、そうね。紹介するわ。充!」
織江に呼ばれて、窓際の席にいた男性が振り返る。
(あの人が笹本さん? 俳優さんみたい)
彫りの深い整った顔立ちの男性が、にこやかに近づいて来た。
「紹介するわ。彼が婚約者の笹本 充よ。充、この子が私の可愛い花穂」
ああ!と笹本は笑顔で花穂と握手する。
「初めまして、笹本です。織江からいつも聞かされてました。あんまりあなたのことばかり話すから、正直少しヤキモチ焼いたくらいです」
ええ?と花穂は驚いて仰け反る。
「青山と申します。そんな、私こそ織江さんにお世話になりっぱなしで……」
「お会いできて嬉しいです。それで、彼は今どちらに? ご一緒ではないのですか?」
彼!?と、花穂は目を白黒させる。
「えっと、あの、浅倉と大森は、車に荷物を取りに行ってまして……。あ、戻って来ました」
部屋に入って来た二人は、おっ!という顔でこちらにやって来た。
「織江、久しぶり」
「久しぶり。相変わらずね、大地も大森も」
「ああ。元気そうでなにより」
そして大地は笹本にも向き合う。
「久しぶりだな、笹本」
「お久しぶりです、浅倉さん。またコンペでお会いできて、とても光栄です。プレゼン、とくと拝見します」
「随分余裕だな。こっちもお手並み拝見といこう」
「負けませんよ」
「こちらこそだ」
不敵な笑みで対峙する二人に、花穂はヒヤヒヤする。
だが織江はそんな二人に、なにやら感慨深げな表情を浮かべていた。
「織江さん?」
「ん?ああ、なんだか嬉しくて。二人はずっとこんなふうに良いライバルだったから。また昔に戻ったみたい」
「そうなんですね」
花穂は大地の横顔を見つめる。
かつて笹本に負け、スランプに陥った大地。
だが今は自信に満ち溢れている。
(大地さんなら勝てる。私も全力でサポートしてみせる)
決意を込めて花穂は唇を引き結んだ。