二度と恋はしないと決めたのに~フライトドクターに娘ごと愛されました~
* * *

その日の夜も、櫂は仕事帰りに千咲の家にやって来た。いつもよりも遅い時間だったため、すでに夕食もお風呂も終え、紬はもう眠ってしまっている。

「お仕事お疲れ様です」
「遅くにごめん、退勤間際に急患が来て――」

玄関先に出迎えた千咲を見て、櫂は言葉を詰まらせる。

「櫂さん? 大丈夫だったんですか?」

なぜか動揺した様子の彼に戸惑いつつ、千咲は声をかけた。

「あ、あぁ。すぐに緊急手術になったから、脳外の先生たちに任せてきた。紬はもう寝ちゃったか」
「はい。寝顔でもよければ顔を見ていきますか? 夕食がまだなら、食べていってください」
「今日は顔を見にきただけのつもりだったんだけど⋯⋯上がってもいいのか?」

躊躇いがちに尋ねられ、千咲は首をかしげた。

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