二度と恋はしないと決めたのに~フライトドクターに娘ごと愛されました~
彼から人づてに褒められたような気がして、なんともムズ痒い。
千咲はなにかお礼をと言い募る糸井や彼の家族に、「当然のことをしただけなので、お気持ちだけで。お大事になさってください」と笑顔で伝え、病室をあとにした。
救急車を下りて二年。過去には、こうして対応にあたった患者から消防署宛てに感謝の手紙をもらったこともある。やりがいを思い出す反面、もう一度乗るには踏ん切りがつかない。
「あっ、ぴー」
「そう、これピッてして。下向きのボタンね」
紬のはしゃいだ声で、千咲は意識を切り替える。
大好きなエレベーターのボタンを押させてやると、ご機嫌で連打し始める。電車に乗ってのお出かけが楽しくて仕方ないらしく、家を出てからずっとテンションが高い。
「紬、何回も押さないよ」
「うー」