二度と恋はしないと決めたのに~フライトドクターに娘ごと愛されました~
これからは、自分にも頼ってほしい。千咲と紬が認めてくれるのならば、夫として、父親として、家族の一員に加えてほしい。
(それに、もう救急車に乗っていないと言った千咲の表情が気にかかる)
救命士は二十四時間勤務のため、ひとりで紬を育てながらだと続けるのは難しい。だから今は乗っていないのかと思ったが、あの表情はそれだけではない気がする。
(お祖母さんを亡くしてまだ二年か⋯⋯。きっと罪悪感が胸に残ったままなんだろうな)
あの夜も、祖母を亡くした悲しみと、脳梗塞の兆候を見逃した罪悪感で押しつぶされてしまいそうだったのを思い出す。
千咲の悲しみや罪悪感もひっくるめて、自分が守りたい。千咲と紬を笑顔にしたい。楽しそうに笑うふたりを、誰よりも近くで見ていたい。
「今度こそ、絶対に逃さない。必ず彼女を幸せにしてみせる」
その願いを実現させるべく、千咲の許す限りふたりとかかわる時間を作ろうと心に決めている。
「そっか。茶化して悪かった、うまくいくといいな」
「あぁ、サンキュ」
櫂は沖田と更衣室で別れると、千咲にメッセージを送るべくスマホを取り出した。