二度と恋はしないと決めたのに～フライトドクターに娘ごと愛されました～

責任を取るとか、そういう道義的な意味ではない。

まさか子供を生んでいたなんて思ってもみなかったし、なにがなんでも探し出せばよかったと後悔もしている。

けれど千咲との結婚を考えているのは、単純に二度と彼女を手放したくないからだ。

彼女を認識したあの日、悪意に負けまいと凛とした後ろ姿を見た瞬間から、櫂は千咲に惹かれていた。助けを求める人たちを懸命に救おうとする千咲を、自分の手で守りたいと思っていた。

ひとりで子供を生み育てるのは、どれだけ大変だっただろう。

千咲には頼るべき家族がいないと聞いた。そんな中、懸命に娘を守ろうとする彼女が目に浮かぶ。

紬と接したのはたった数十分だが、愛情をたっぷり受けて育っているのだろうと感じた。

愛らしい笑顔、自分がおいしいと思うものを分けてあげたいという優しさ、素直に甘えるぐずり方。それらは、千咲が紬をいかに大切に育てているかを物語っている。