転生王女の私はタロットで生き延びます~護衛騎士様が過保護すぎて困ります~
「だが、グレティスの件は手を抜いていたのではないか?」
「ユーリウス殿下、その話は!」
「何? グレティスがどうかしたの?」
「すまない。てっきり、リュシアナは知っているものだとばかり」
「お兄様、カイル……これは私も知る必要のある案件、ですよね?」

 グレティスはタロットカードを入手するために呼んだ、『忘れ()の小間物屋』の店主。そしてその背景に、お姉様がいた可能性が高かったのだ。
 そのグレティスに何かあった。しかも秘密にされていた事実を聞けば、誰だって怒るだろう。

「教えてください」
「知らないのであれば、知らないままの方がいいこともある」
「お兄様! 私はすでに、お姉様のことでも怒っているのです。いくら記憶がなくても、お姉様はお姉様なのに、見送ることも許されなかったなんて」
「あれは本当に危ないんだ! お前にカリエンテ病を感染させたグレティスを、いとも簡単に切り捨てたんだからな」
「ユーリウス殿下!」

 カイルがお兄様を止めたけれど、もう遅い。

 危ない、切り捨てた。そのワードだけで、グレティスの末路が容易に想像がついた。さらにカイルの反応も相まって。

 つまり、私があの日、王宮に呼ばなければ、グレティスは殺されずに済んだのだ。さっさと荷物をまとめて逃げられたのに……私の軽率な行動が、判断が、一人の老婆を……。

 目の前が真っ暗になるようだった。
< 147 / 211 >

この作品をシェア

pagetop