転生王女の私はタロットで生き延びます~護衛騎士様が過保護すぎて困ります~

第4話 護衛騎士への戸惑い

 目を覚ましてから、たった三日間。私はようやく部屋の外に出ることができた。
 ずっと部屋の中で事足りる生活をしていたなんて、これぞお姫様の生活だと、記憶もないのに一人で勝手に納得をする。

 これは多分、肝心な部分を忘れているだけで、完全な記憶喪失というわけではないのだろう。その証拠に、一歩部屋の外に出た途端、まるで憧れていた世界が目の前に飛び込んできたような感覚を味わった。

「リュシアナ様?」

 歓喜のあまり、両手を口元で合わせていると、後ろにいたカイルが何事かと声をかけてきた。無理もない。護衛対象が突然、立ち止まってしまったのだから。

 けれど今の私に、カイルを気遣う余裕はなかった。

「部屋の中も素敵だったけど、外もだなんて……カイル、中庭ってどっちにあるの?」
「み、右です」

 カイルの示した方へと目を向けると、明るい光が差し込む長い廊下が続いていた。

 白い石の床は滑らかに磨かれ、足音すら静かに吸い込んでしまうかのように美しい。壁に等間隔で並ぶ燭台の装飾も、陽の光を受けてほのかに煌めいている。こんなにも美しい場所にいたなんて、信じられない気持ちだった。
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