転生王女の私はタロットで生き延びます~護衛騎士様が過保護すぎて困ります~
「っ! カイル、早く行きましょう。ううん。ゆっくり案内して」

 振り返り、カイルの袖を掴む。深緑色の瞳の中に戸惑いの色が見えた。記憶喪失になってから、何度も見た表情だったけれど、今は不思議と心地よい。

 だってカイルの瞳に映っているのは、かつてのリュシアナではないからだ。今の私が引き出した表情。それが嬉しくて堪らなかったのだ。

「お待ちください、リュシアナ様。そう騒がれては人目につきます」
「あっ、そうね。ごめんなさい」
「そのため、中庭への道は通常のルートを行きませんので、俺から離れないでください」
「大丈夫。カイルから離れたら、自力で部屋に戻れそうにないもの。さすがにそれだけは、ね」

 ニコリと笑ってみせるが、カイルの表情は変わらない。

 やっぱり信用できないのかな。護衛騎士になったのは、リュシアナが寝込んでいる最中だって聞いたから、ミサとは違うと思ったんだけど……。

 すると突然、袖を掴んでいた手が取られた。護衛騎士だから、危害を加えるとは思わないけれど、私は驚きのあまり、一歩後ろに引く。
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