転生王女の私はタロットで生き延びます~護衛騎士様が過保護すぎて困ります~
「戸惑われるのも無理はありません。姫様は……いえ、リュシアナ様は目を覚まされるまで、高熱で寝込んでおられましたから」
「熱を? あっ、だからさっき……」
「はい。確認させていただきました。リュシアナ様が罹っていたのはカリエンテ病といい、高熱が数日から、長い者で数週間続くとされる病です」

 ベッドの上。怠い体の意味はそういうことなのね。だけどまだ、腑に落ちない。

「無事に熱が下がっても、稀に後遺症として記憶を失うことがあるそうです。だからリュシアナ様が、私のことやご自分のことを認識できなくても……このミサが全力でサポートいたします」

 私の手を取りながら、懸命にいうミサ。その必死さに、私は逆に申し訳なくなった。なぜなら私は、あまり深刻に捉えていなかったからだ。
 
 それは記憶がないからだろうか。熱にうなされ、破壊された私という精神。閉じ込められていた何かが崩れたみたいな感覚。
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