不幸を呼ぶ男 Case.1
【滝沢のアジト】
滝沢「……そして俺は日本に来た」
そのあまりにも壮絶な過去の話に
璃夏はただ言葉を失っていた
璃夏「言葉が出ないとは……まさにこの事ですね……」
滝沢「だがおかしい」
滝沢は苦しそうに頭を抱えた
滝沢「所々記憶が消えている。もっと肝心なことがあった気もするが思い出せないんだ……」
はっとしたように璃夏が顔を上げた
璃夏「滝沢さん。ここ最近見ていた夢はどんな内容だったんですか?順番に教えてもらえますか?」
滝沢は少し戸惑った
だが璃夏の真剣な目に押されるように話し始めた
彼は夢で見た光景を一つ一つ思い出すように語っていく
滝沢「最初はドイツの街並みだった」
「顔の見えない男女と三人で旅行していた」
「飛行機に乗るまでは確か幸せだったはずだ」
「だが飛行機が墜落した」
「次に見た夢はその続きだ」
「雪の中俺はロシアの兵士に助け出された」
「そして病院に運ばれドクターと呼ばれる男に注射を打たれていた……」
「そこでお前に起こされた」
璃夏は息を詰めて聞いていた
やがて彼女は一つの可能性に気づく
璃夏「……確かドイツから日本へ向かう飛行機のルートってロシアの上空を通りますよね」
滝沢「そうなのか?」
璃夏「はい。確かそうだったはずです」
滝沢「……じゃあドイツから日本へ帰る途中の飛行機がロシアの雪山に墜落した。そう考えれば話が繋がるわけか」
璃夏「夢の話が……」
璃夏はゴクリと唾を飲んだ
璃夏「何か辻褄が合いすぎてて怖いです」
滝沢「……」
重い沈黙が部屋を支配した
「あーーーっ!」
突然璃夏が何かを思い出したように叫んだ
滝沢「なんだ?急に」
璃夏「その!『彼女』!見せてくださいよ!」
璃夏はわざと明るい声で頬を膨らませて見せた
この重い空気を変えようとしているのだ
滝沢「あぁ?また今度だ」
璃夏「いま!」
滝沢は仕方ないという顔で立ち上がった
そして本棚の隠し通路から射撃場へと二人で向かう
滝沢は武器庫の一番奥からあの銀色のケースを持ってきた
彼はその箱をゆっくりと開ける
中から銀色に輝くS&W M500が姿を現した
璃夏「……でっかい!」
璃夏は思わず声を上げた
滝沢はその銃を大事そうに手に取る
そして璃夏にではなくその銃に語り掛けるように静かに言った
滝沢「こいつとイヴァンのことだけは」
「なぜか記憶から消えないんだ」
その横顔は璃夏が今まで一度も見たことのない
まるで迷子になった子供のような
どこか心細い表情をしていた
滝沢「……そして俺は日本に来た」
そのあまりにも壮絶な過去の話に
璃夏はただ言葉を失っていた
璃夏「言葉が出ないとは……まさにこの事ですね……」
滝沢「だがおかしい」
滝沢は苦しそうに頭を抱えた
滝沢「所々記憶が消えている。もっと肝心なことがあった気もするが思い出せないんだ……」
はっとしたように璃夏が顔を上げた
璃夏「滝沢さん。ここ最近見ていた夢はどんな内容だったんですか?順番に教えてもらえますか?」
滝沢は少し戸惑った
だが璃夏の真剣な目に押されるように話し始めた
彼は夢で見た光景を一つ一つ思い出すように語っていく
滝沢「最初はドイツの街並みだった」
「顔の見えない男女と三人で旅行していた」
「飛行機に乗るまでは確か幸せだったはずだ」
「だが飛行機が墜落した」
「次に見た夢はその続きだ」
「雪の中俺はロシアの兵士に助け出された」
「そして病院に運ばれドクターと呼ばれる男に注射を打たれていた……」
「そこでお前に起こされた」
璃夏は息を詰めて聞いていた
やがて彼女は一つの可能性に気づく
璃夏「……確かドイツから日本へ向かう飛行機のルートってロシアの上空を通りますよね」
滝沢「そうなのか?」
璃夏「はい。確かそうだったはずです」
滝沢「……じゃあドイツから日本へ帰る途中の飛行機がロシアの雪山に墜落した。そう考えれば話が繋がるわけか」
璃夏「夢の話が……」
璃夏はゴクリと唾を飲んだ
璃夏「何か辻褄が合いすぎてて怖いです」
滝沢「……」
重い沈黙が部屋を支配した
「あーーーっ!」
突然璃夏が何かを思い出したように叫んだ
滝沢「なんだ?急に」
璃夏「その!『彼女』!見せてくださいよ!」
璃夏はわざと明るい声で頬を膨らませて見せた
この重い空気を変えようとしているのだ
滝沢「あぁ?また今度だ」
璃夏「いま!」
滝沢は仕方ないという顔で立ち上がった
そして本棚の隠し通路から射撃場へと二人で向かう
滝沢は武器庫の一番奥からあの銀色のケースを持ってきた
彼はその箱をゆっくりと開ける
中から銀色に輝くS&W M500が姿を現した
璃夏「……でっかい!」
璃夏は思わず声を上げた
滝沢はその銃を大事そうに手に取る
そして璃夏にではなくその銃に語り掛けるように静かに言った
滝沢「こいつとイヴァンのことだけは」
「なぜか記憶から消えないんだ」
その横顔は璃夏が今まで一度も見たことのない
まるで迷子になった子供のような
どこか心細い表情をしていた