爛漫ろまんす!

17歳の誕生日は悲劇の始まり

「かみ~~!!誕生日おめでとう!!」

「はい、アタシらからの誕プレ!」

「わあぁ~~、ありがとう!!。しかもコレ、直ぐに売り切れちゃう「焼肉グミ・カルビ味」じゃんっっっ!!」

「あんたそのグミ食べたがってたもんねぇ~」

「開店前に並んだ甲斐があったね」

「あーりん、ゆわっち……本当にありがとう!!」

放課後の教室で、親友である2人を抱き締めた。そう────今日はあたしの、17歳の誕生日だ。

今日は家に帰ったら誕生日パーティー。
楽しみな筈なのに……なんだか気が乗らない。
夕日に照らされる帰り道───神美(かみ)はバッグに入っていた菓子パンを食べながら物思いにふける

「…神美(かみ)、また太った?」

「え、バレた?」

「えへへ……って可愛くポーズしてもダメだから。プレゼントにグミ…その他諸々あげといてなんだけどさ……、あんた…痩せた方が良いよ。」

「ええええ!?なんでーーー!!」

「ただ単にあんたの身体が心配だからよ……。まだゆるキャラのようなコロコロボディだから許されるけど……───それ以上太ったら、本当に豚になるわよ!?」

「豚?……豚カツの話?」

「ダメだわこの子──全然伝わってないっす」

「単刀直入に聞くけど、彼氏とか欲しくないわけ!?」

「ほ、欲しいよ!!そりゃあ…あたしだってさ……美味しいクレープや、パフェや、アイスクリーム……ハンバーガーを競い合って一緒に食べる男の子が欲しいよ!!!!」

「もうそれ、ただのフードファイターだから。」

呆れる親友2人を一瞥して、神美(かみ)は足を止めた。2人の影が少し遠のいた

「…あーりん、ゆわっち……ありがとね、あたしの身体を心配してくれて……───」

「…神美(かみ)が美味しそうに食べる姿は、見ててこっちも幸せになれるけどさ、でも……たまに感じるのよ……、神美(かみ)が"食べる"行為って、義務みたいな感じってゆーの?。」

「無理矢理そうさせられてるって感じがするんだよね……」

「あはは、そんな事ないよ~───……あたしが好きで食べてるのっ。でも……そうだよね…───ダイエット……考えてみようかなぁ……」

神美(かみ)……っアタシ、走るのとか付き合うからね!?」

「アタシもアタシもーー!!」

「2人とも……、本当にありがとう!」

その《《違和感》》は前から何となく感じてはいた

幼き頃、ご飯を食べる時の母との会話は違和感でしかなかったのだ。

神美(かみ)、残さず食べなさい。まだ貴女は食べなきゃいけないの》

《お母さん…、あたしもうお腹いっぱいだよ!?》

《駄目よ……もっと、食べて…もっと肥えなきゃ……───そんなんじゃ"美豚(びとん)"になれないわ……》

《あたし、某有名ブランドなんか目指してないよ!?》

《────もっと太りなさい。豚のように……血色の良い……かぶりつきたくなるような───》

その時のお母さんは目が虚ろで、まるで誰かに操られているかのような……

(今思えば、美豚(びとん)って…なんだろ?)

「じゃ、神美(かみ)、Happybirthday!」

「また、明日ねっ♪今日は楽しんでっ」

「あ、うん!、2人ともありがとね!!また、明日~~っ」

手を振りながら2人を見送った後、古びた玄関の引き戸を開けると、お父さんとお母さんが満面の笑みで立っていた。

「おかえり、神美(かみ)

「早くいらっしゃい、皆待ってるわよ」

「あ…、た、ただいま!」

なんだか気味が悪いと思ってしまった。
どうして……お父さんとお母さんは《《喪服》》を着ているの?

おばあちゃんが亡くなったあの日から
あたしが見ているお父さんとお母さんは"普通"ではない気がする。

2人の後ろについて、リビングへ向かうと
親戚の皆が全員揃っていた。

「わ~皆久しぶり~!!今日は本当にありがとう!」

でも、なんで……

「なんで皆も…喪服着てるの?」

神美(かみ)の顔を凝視する親戚の中に、中華服を着た顔面に御札を付けた者達が混ざっていた。

「这个女儿是传说中的食材吗?」

「え!?、だ……誰ぇ!?あとなんていってるの!?」

「キョンシー様───美豚(びとん)は、本日で16年物となりました……」

「こんなにも丸く…、非常に食べ応えがありましょう……」

不気味に笑う父と母に釣られて、全員がクスクスと笑い始めた。

すると、キョンシーと呼ばれた中の1人が顎に手を当て

「杀这个女儿」

"この娘を殺せ"

神美(かみ)の脳内で、キョンシーの言葉が勝手に翻訳されたのだ。

「え……もしかして……絶体絶命的な?」
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