愛を知った日
前を歩く伊月さんと明美ちゃんのワイワイした会話を聞きながら私は鳳蝶さんの隣を静かに歩いていた。明美ちゃんはもうすでにタメ口で伊月さんのことを呼び捨てにしている。明美ちゃんのコミュ力の高さには驚く。私にはないものだ。
「すみませんでした。」
私は隣の鳳蝶さんに話しかけた。
「何が?」
「その…鳳蝶さん達も用事があったからあそこにいたんですよね。」
「用事はもう終わったから大丈夫だ。それに俺達はいつもあの辺にいるんだよ。ちょうど暇だったからよかった。」
「それなら良かったです。」
話している横顔もかっこよくモテるだろうなぁと思っていると
「それよりその鳳蝶さんってやめてくれないか?」
「えっあっ。ごめんなさい。」
「俺達タメだろ。鳳蝶でいい。」
「さすがに呼び捨ては畏れ多いので鳳蝶くんでもいいですか?」
「まぁ。あんまり変わんねぇけどそれがいいならいい。」
「じゃあ鳳蝶くん。」
「おう。」
鳳蝶くんがそう言った瞬間、私はよろけてしまった。
「危なっ。大丈夫か?」
鳳蝶くんが受け止めてくれた。
「すみません。ありがとうございます。」
「気をつけろよ。俺がこっち歩く。」
「ありがとうございます。」
「なにいちゃいちゃしてんの〜?」
「してねぇよ。」
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