愛を知った日

みんなと別れ奏を家まで送る。
「今日はありがとな。疲れただろ？」
「ううん。楽しかった。こちらこそありがとう。」
そう言って奏は自分の家に入っていった。
それを見届けて俺は歩き出した。駅に向かい、家の最寄りまで電車に乗る。そうしてアパートに着くと後ろから声をかけられた。
「鳳蝶！久しぶり！」
振り返って顔を見ても誰か思い出せない。
「えっと…どちら様ですか？」
「ひどいなぁ。自分が告白した人のこと忘れるんだ。でもそうだよね！もう何年も会ってないから忘れちゃったか。仲馬蘭(なかま　らん)だよ。」
その名前を聞いて記憶を辿ってみると1人の人物が思い当たる。それは幼い頃の初恋の人だった。
「らんちゃん！」
「思い出してくれた？」
「小学校の時の？」
「正解〜」
「なんでここが？」
「まぁ…私の情報網舐めてもらっちゃ困る。」
「そうか…」
「私またこっちに引っ越して来ることになったの。高校も同じだからこれから友達としてよろしくね〜」
思い出せば蘭ちゃんの家族は転勤が多くよく引っ越しをしていると話していた。
「ツモ高に？蘭ちゃん勉強できただろ。」
「それは小学生の頃の話でしょ。私も色々あったの。」
「色々って？」
「秘密！」
「まぁ今日は挨拶に来ただけだし帰るわ。また学校で。」
去って行ってしまった。
俺はこの時、分かっていなかった。蘭ちゃんの存在が俺と奏の関係に波乱をもたらすということを…