婚約破棄されたけれど、10年越しの初恋を諦めきれません

第1章 砕けた約束

私には、忘れられない初恋の人がいる。

名前は——久遠 司(くおん・つかさ)。

今は久遠商事の営業部長。35歳という若さで、その座についたエリートだ。

出会ったのは、私が十五歳のとき。

高校受験を控えた私は、父の命令で家庭教師をつけられた。

でも——当時の私は、生意気で傲慢だった。

「どんなに頑張っても、人は生まれた場所で決まるのよ。」

そんなことを平然と口にし、やってきた家庭教師を何人も追い返した。

学生のバイトなんて、私からすれば“身分違い”。

そんな気持ちが、無意識に言葉や態度に出ていたのだと思う。

そして——

「今日が最後だ。これでダメなら、もう諦めなさい。」

そう言って父が連れてきたのが、久遠司だった。

「初めまして、澪さん。」

その瞬間、私の目に映ったのは——

ハンサムで、どこか色気のある大人の男性だった。
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