婚約破棄されたけれど、10年越しの初恋を諦めきれません
でもそれでもいい。

始まりが、形だけでも“婚約”であっても——
私はあの人の隣に立ちたかった。

なによりも、私の初恋はまだ終わっていないのだから。

そして数日後——
久遠家と望月家の間で、正式なお見合いが組まれた。

私はもう、舞い上がりそうな気持ちを抑えきれなかった。

司さんのあの“父に相談する”という返事は、前向きな意味だったのかもしれない。
そう、信じていた。

会場は都内の高級割烹料理屋。

落ち着いた内装に、静かな琴の音が流れている。

「この度は、両家のご縁を結ぶために、ようこそお集まりくださいました。」

父の晴れやかな挨拶に、私も思わず背筋が伸びる。

母は嬉しそうに私の横で頷き、久遠会長も満足げな顔をしていた。

そして——ただ一人。
司さんだけが、冷静な表情で、微かに口元を引き結んでいた。
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