婚約破棄されたけれど、10年越しの初恋を諦めきれません
「司が、澪さんの家庭教師をしたのが縁だったとか?」

久遠会長がそう尋ねると、父がにこやかに頷いた。

「ああ……」

「はい、そうなんです。」

私が代わりに応じると、司さんは——
まるで苦虫を噛み潰したような顔になった。

「……それから五年、澪さんは司を忘れずにいたと。」

会長が感心したように言うと、司さんは無言のまま、視線を下げた。

それは、無関心? それとも——迷い?

私の中で、膨らんでいた期待が、かすかに揺らいだ瞬間だった。

お見合いの席も半ばに差し掛かった頃、少し沈黙が流れたあと、司さんがふいに口を開いた。

「澪さんは今……交際相手はいないんですか?」

その問いに、私は真っ直ぐに司さんを見つめて答えた。

「はい。おりません。」

胸を張って言えた。だって、私はずっと司さんしか見てこなかったのだから。
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