婚約破棄されたけれど、10年越しの初恋を諦めきれません
すると今度は、司さんのお父様が息子に向かって尋ねた。

「司はどうなんだ? 今、付き合ってる相手は?」

「……いや、いないけれど……」

歯切れの悪い返事に、すかさず会長は笑顔を浮かべる。

「だったら、いいじゃないか! おまえもそろそろ結婚する歳だろう?」

「でもさ……」

司さんは視線を落とし、珍しく言い淀んだ。

「澪さんは、まだ二十歳だよ?俺なんかと結婚して、本当にいいのか?……三十のオジサンだぞ。彼女のことをちゃんと考えろよ。」

その瞬間、私はまっすぐに司さんを見上げて、迷いなく言った。

「司さんは、オジサンなんかじゃありません。」

声が少しだけ震えていた。けれど、言葉ははっきりと届いたと思う。

「今も——私の王子様です。」

応接室の空気が、一瞬ふわりと柔らかくなった。

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