拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
「お姉様! なんて馬鹿なことを!」
今にも泣きそうな顔で叫んだのは、ピンク髪に緑眼の小柄な女性だ。
彼女はフィーヌの妹であるレイナ・ショット。バナージの浮気相手であり、フィーヌに『ドレスの後ろが乱れている』とこの部屋に行くよう勧めた人物でもある。
「お姉様がわたくしを嫌って辛く当たっていたのはまだ許せました。けれど、バナージ様にまでこんな酷い仕打ちをするなんて──」
レイナは胸に手を当てて、涙を流しながらフィーヌに訴えかける。
「泣くなレイナ。レイナは優しいな。俺は、結婚する前にフィーヌがこんな悪女だと判明してむしろよかったと思っている。結婚したあとにどこの子かわからない子供を育てなければならなくなるところだった」
バナージはレイナを慰めるように肩を抱いた。
(町中で素人が披露する演劇だってもうちょっとマシだわ)
あまりにも酷い演出に、思わず失笑してしまう。
フィーヌと五歳年上のバナージが婚約したのは、彼女が六歳のときのことだ。以来、ダイナー公爵家に嫁ぐべく、厳しい淑女教育を受けていた。
この世界には、〝神恵〟と呼ばれる特別なスキルを持つ人が存在する。神恵は神からの贈り物だとされ、その力を持つ者は特別視される。フィーヌは五歳のときに「土の声が聴ける」という神恵を持つことが判明し、ダイナー公爵家からの打診で婚約が成立したものだった。
婚約した当初から、公爵令息であるバナージはなにかとフィーヌを下に見る態度をとることがあった。
今にも泣きそうな顔で叫んだのは、ピンク髪に緑眼の小柄な女性だ。
彼女はフィーヌの妹であるレイナ・ショット。バナージの浮気相手であり、フィーヌに『ドレスの後ろが乱れている』とこの部屋に行くよう勧めた人物でもある。
「お姉様がわたくしを嫌って辛く当たっていたのはまだ許せました。けれど、バナージ様にまでこんな酷い仕打ちをするなんて──」
レイナは胸に手を当てて、涙を流しながらフィーヌに訴えかける。
「泣くなレイナ。レイナは優しいな。俺は、結婚する前にフィーヌがこんな悪女だと判明してむしろよかったと思っている。結婚したあとにどこの子かわからない子供を育てなければならなくなるところだった」
バナージはレイナを慰めるように肩を抱いた。
(町中で素人が披露する演劇だってもうちょっとマシだわ)
あまりにも酷い演出に、思わず失笑してしまう。
フィーヌと五歳年上のバナージが婚約したのは、彼女が六歳のときのことだ。以来、ダイナー公爵家に嫁ぐべく、厳しい淑女教育を受けていた。
この世界には、〝神恵〟と呼ばれる特別なスキルを持つ人が存在する。神恵は神からの贈り物だとされ、その力を持つ者は特別視される。フィーヌは五歳のときに「土の声が聴ける」という神恵を持つことが判明し、ダイナー公爵家からの打診で婚約が成立したものだった。
婚約した当初から、公爵令息であるバナージはなにかとフィーヌを下に見る態度をとることがあった。