拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
 それが決定的になったのは、三年前のこと。フィーヌの妹であるレイナが、非常に珍しい神恵である植物育成スキル『緑の手』の持ち主であることが判明したときからだ。

 緑の手は農作物の成長を促し五穀豊穣をもたらすのでとても重宝される。レイナはたちまち周囲からちやほやされる存在になり、バナージもまた彼女と親しくするようになった。

 バナージがフィーヌの神恵までもを小バカにするような発言をするようになったのはその頃からだった。

『土の声が聞ける? 本当かどうか、疑わしいものだ』
『これほど地味で役立たずな神恵も珍しいな』
『少しはレイナを見習ったらどうだ? 彼女のおかげで、この地はどれだけ恩恵を受けていることか』
 
 これらはバナージから直接、フィーヌが言われた台詞だ。
 
(この方はわたくしの神恵でご自分がどれだけ恩恵を受けているのか、わかっていらっしゃるのかしら?)

 わかっていないから、このようなことをやらかしたのだろう。

 そのとき、部屋に凛とした声が響いた。
 
「先ほどから聞いていた、それは誤解だ。俺とフィーヌ嬢は極めて健全な距離をとって、そこに向かい合って座っていただけだ。お互い、指一本触れていない」

 ホークはバナージの誤解を解こうと、今までの状況を丁寧に説明し始める。
 その態度に、フィーヌは少なからず驚いた。
 
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