拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
「見て。死神とあばずれがいるわ」
「今日も誰かを休憩室に連れ込む気かしら」
 
 どこからともなく聞こえた声に、フィーヌはハッとした。
 声のほうを見ると、若い令嬢が数人でかたまり、ひそひそ何かを囁きながらこちらを見つめていた。全員、レイナと親しくしていた下級貴族の令嬢だ。

(なるほど。とりまきを使ってわたくしを辱めようという魂胆ね?)

 どんな嫌がらせを仕掛けてくるのかとわくわくしていたのに、思った以上に幼稚でがっかりする。
 フィーヌはくるりと体の向きを変えて、つかつかと令嬢達に歩み寄った。

「ごきげんよう。本日は妹の結婚式にお越しいただき、ありがとうございます」

 フィーヌはにこっと令嬢達に笑いかける。
 
 「え? ええ、どういたしまして」

 令嬢たちは話しかけられるとは思っていなかったようで、動揺したように顔を見合わせた。

「ところで、今死神とあばずれって台詞が聞こえたのだけど──」

 フィーヌは頬に手を当てて令嬢達を見つめる。
 
「そ、それは──」
「いくらドレスが際どいからって、あばずれはさすがに失礼よ」

 フィーヌは令嬢のうちのひとりをちらりと見る。
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