拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
 すると、令嬢は目にいっぱいの涙を浮かべ、ふるふると体を震わせながら「申し訳ございませんでした」と謝罪する。

「以後、発言には気を付けることね」

 フィーヌは持っていた扇子をバシンと閉じると、すたすたとその場を立ち去りホークの元に戻った。

「ふっ、くっ」

 横に立つホークの様子がおかしいのでチラッと見ると、彼は腹を抱えて笑うのを耐えていた。

「何がおかしいのですか」
「いや。頃合いを見て助けに行こうと思っていたのだが、全くその必要はなかったな。まるで悪女だ」
「悪女で悪かったですね」

 フィーヌはむっとして頬を膨らませる。
 フィーヌだって普段からこんな風な態度を取るわけではない。今は、同じような嫌がらせをも受けないようにわざと悪女風に振る舞ったのだ。

「褒め言葉だ」
「そんな褒め言葉、聞いたことありません」
「そうか? 機嫌を直せ」

 ホークは未だに笑っている。

「まあ、ロサイダー卿があんな風に笑うなんて」

 どこからともなく、驚いたような声が聞こえてくる。
 ふと辺りを見ると、ほうっと見惚れたような目でホークを見つめる令嬢が何人もいた。

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