拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
(ホーク様ってバナージ様が『死神』なんて変な噂を流したから怖がられていたけど、社交界に出たら人気だったんじゃないかしら?)

 若く、見た目もよく、おまけに辺境伯。言うことなしの優良物件だ。
 なんとなく、もやっとしたものが胸の内に広がる。
 
 そのとき、ふと目の前に影が差した。

「ホークじゃないか。久しぶりだな。王立学院以来じゃないか?」

 どこか見覚えがあるような男性達が、ホークに話しかけてきた。
 ホークは胡乱気な視線で男達を見返す。

「遊び惚けすぎて、記憶力が落ちているんじゃないか? 半年前にサロンで会った」
「なんだとっ!」

 男性のひとりがホークに掴みかかろうとする。しかし、それを一緒にいた男のひとりが止めた。

「まあ、落ち着け。今日はバナージのめでたい席だ。祝杯でも上げようじゃないか」

 男が片手を上げると、ワイングラスの載ったトレーを持った給仕が近づいてきた。男はそのグラスを手に取り、その場にいる仲間に手渡す。そして、最後のひとつをバナージに差し出した。

 バナージはじっとそのグラスを見つめる。

(どうしたのかしら?)

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